武田泰淳「歯車」
速水兄弟こそは本当の天才でした。兄の勘太郎さんには経営の才が、弟の勉次さんには職人の腕があった。だが私の拝見したところ、真の仕事の神様、発明の天才は弟さんの方だった。御ふたりの智能が歯車のように噛みあって、会社は大きくなったと世間一般は考えている。しかし、いくら兄弟とはいえ何の問題もなかったわけではない。否、はじめっから兄さんの方で速度を調節していたのであって、小さな危険はヒョイヒョイあらわれていたのです。
- 作者: 武田泰淳
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/08/17
- メディア: 文庫
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