2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

高見順「誇りと冒涜」

狭間は私の古い知り合いである。一時は有望株であったが、師匠K氏の夫人と逃亡してから作家生命を絶った。一説によれば、狭間は夫人を射止めることに野心を燃やしただけだという。その事件から十数年後、狭間がひょっこり私の家に訪ねてきた。そして断りき…

高見順「ノーカナのこと」

陥落直後のラングーンで、印度人コック長ポトラーズは特別料理を作る約束を果たさなかった。材料費をくすねておいて、発覚しても謝らなかった。私はそんなポトラーズから印度人を考え、ひいては人間に絶望しそうな自分が恐かった。そんなときでも給仕ノーカ…