2008-01-01から1年間の記事一覧

上林暁「禁酒宣言」 

酒が小生の生活を滅しそうなのです。深酒、梯子酒、酔いつぶれ。宿酔の自己嫌悪に陥るたびに、今日から酒を慎もうと思い、孤独に身悶えするのです。一日労作の後の静かな喜び、あの楽しい昔に還るために、断固止めたいと思うのです。けれども、どうにも出来…

石川達三「青春の蹉跌」

生きることは闘争だ。たった一度しかない自分の人生を悲惨なものにしたくない。どのような幸福を選んだところで俺の自由だ。江藤賢一郎の計算はすべて将来に向かっていた。大橋登美子などへは詐術に対する罪の意識より、自分自身への反省がつのった。司法試…

安部公房「人間そっくり」

「ぼく、火星人なんですよ」というその男は、話をきいていればおとなしいが、興奮状態になると手がつけられないらしい。理屈っぽい火星人は、発作のように笑いながら、ぼくを押しのけて「人間そっくりでしょう?」。・・・しかし、こんな話をしても、どれほ…