高見順「ノーカナのこと」
陥落直後のラングーンで、印度人コック長ポトラーズは特別料理を作る約束を果たさなかった。材料費をくすねておいて、発覚しても謝らなかった。私はそんなポトラーズから印度人を考え、ひいては人間に絶望しそうな自分が恐かった。そんなときでも給仕ノーカナは常に誠意を示してくれた。私はノーカナを信頼した。絶望に陥りそうだった私は、彼にしばしば救われたのである。だが・・・。
- 作者: 高見順
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05
- メディア: 文庫
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この心境に到達するまでには2通りの道のりが考えられます。子供が持つ純真無垢な姿を守って守って守り通すことがひとつ、もうひとつは、絶望を乗り越えて強く復活した人間を見たときの喜びがエネルギーとなったものです。箱入りの過保護だけにより容易に到達出来る前者にはこれから崩れる危うさがありますが、後者の場合は危機を乗り越えてのものなので土台が完成された人格であるといえます。そしてその場合に不可欠なのは「前向きな人間」の存在です。悩みがあってもそれを表に出さずに、常に前向きに生きている人間の存在は、周囲の気持ちを高めることでしょう。