高見順

高見順「インテリゲンチャ」

東大卒の満岡は、インテリに見合った仕事として、新聞の社説を書いていた。だが、最近、悩みを持ち始めたようである。結局、社説なんてトップの意向に従った、枠内の仕事なのではないか、だとするならば、タイピストと大差ないのではないか・・・。「観念」…

高見順「起承転々」

大人の雰囲気を醸し出す令嬢・雅子に近づいた印南は、兄を名乗る男・佐伯とも知り合いになる。早合点した印南の母親は、佐伯夫人の元へ行き、そちらの妹さんと今後も宜しくお付き合いのほどをと菓子折り持参で出かけるが、どういうわけか話が全然かみ合わな…

高見順「尻の穴」

吉行淳之介君と行ったおかまバーで聞いた出来事に、僕はふと友人の「更生させようとして、かえって自殺に追いやった」という言葉を思い出した。そうだ、大観園のことを書いてみよう。人がごった返して異臭漂い、階段下には真裸の死体がいる。毎度のことだか…

高見順「誇りと冒涜」

狭間は私の古い知り合いである。一時は有望株であったが、師匠K氏の夫人と逃亡してから作家生命を絶った。一説によれば、狭間は夫人を射止めることに野心を燃やしただけだという。その事件から十数年後、狭間がひょっこり私の家に訪ねてきた。そして断りき…

高見順「ノーカナのこと」

陥落直後のラングーンで、印度人コック長ポトラーズは特別料理を作る約束を果たさなかった。材料費をくすねておいて、発覚しても謝らなかった。私はそんなポトラーズから印度人を考え、ひいては人間に絶望しそうな自分が恐かった。そんなときでも給仕ノーカ…

高見順「草のいのちを」

貞子というその女は二十一だという。女優になりたいらしい・・・が、無理だろう。こういう女性のほとんどが脱落していったものだ。社会を知った大人としては、無謀さを阻止すべきかもしれない。けれども、むげに希望の芽を摘みとるのは、どんなものだろうか…

高見順「不正確な生」

わたしはまだまだ気は若い。先日もたち食いをしていると若い男女がやってきて、往来でダンスの稽古をはじめたのである。「おれにも教えろ」「おじさんには無理よ」「なにが無理だ」と、見よう見真似でやってみた。なんだか肩が凝ったみたいな、凝った肩がほ…

高見順「或るリベラリスト」

奥村氏は大正期の作家であるが、現在も旺盛に勉強に励んでおり、とにかく若くてみずみずしい。今日も青年向けのセミナーに出席していて、若手の文芸評論家・秀島らはその姿に感心しきりであった。氏も若い人たちと接することで「青春がかえってきた」と機嫌が…