高見順「起承転々」

 大人の雰囲気を醸し出す令嬢・雅子に近づいた印南は、兄を名乗る男・佐伯とも知り合いになる。早合点した印南の母親は、佐伯夫人の元へ行き、そちらの妹さんと今後も宜しくお付き合いのほどをと菓子折り持参で出かけるが、どういうわけか話が全然かみ合わない――。あとは結末を迎えるばかりの、恋愛物語。ところが・・・?


 ひょいひょいと男どもの間を要領良くすり抜けて、チャッカリしている現代的な女と、その女に振り廻されては傷ついてしまう、情けなくも純情な男の姿が描かれます。色気に抜かれて堕落して、そして、待つのは意外な展開。ラストにいたって、ようやくタイトルの意味がわかるのでした。