2005-12-17から1日間の記事一覧

坂口安吾「花妖」

「孤独が心地いい」とうそぶき、終戦後も防空壕に起居する父、その父を軽蔑する母。開放的な遊び人の次女、前時代的で暴力的な男であるその夫。そして狂気的情熱を持った長女・雪子。終戦後の変化について行く者と行けない者が混ざり合った物憂げな一家が過…

高見順「尻の穴」

吉行淳之介君と行ったおかまバーで聞いた出来事に、僕はふと友人の「更生させようとして、かえって自殺に追いやった」という言葉を思い出した。そうだ、大観園のことを書いてみよう。人がごった返して異臭漂い、階段下には真裸の死体がいる。毎度のことだか…

織田作之助「訪問客」

タバコがなければ一行も書けない十吉のために、君代は今日も煙草を持ってきてくれる。ところが、十吉は女房気取りな君代がうとましい。周囲は「あの娘さんを貰ってあげたらどうです」というが、十吉は煙草を吹かしながら、君代のような女を女房にするのは、…