高見順「インテリゲンチャ」

 東大卒の満岡は、インテリに見合った仕事として、新聞の社説を書いていた。だが、最近、悩みを持ち始めたようである。結局、社説なんてトップの意向に従った、枠内の仕事なのではないか、だとするならば、タイピストと大差ないのではないか・・・。「観念」と「実在」のはざまに悩む生活に、突然事件が発生した。妹が家出し、妻のある男と同棲したのである。満岡にとってこれは、悩みを吹き飛ばす、現在進行形の竜巻だった。


 自分のことを「インテリ」と信じるエリート人間たちの思想的な新生。理知的なインテリが、情緒的な娘の行動に出くわします。中年の主人公は、母親には未だに子供のように扱われ、娘ほど年の離れた妹にも気圧されてしまいます。彼らは真剣に悩んでいます。しかし「インテリの悩み」を軽蔑した風刺作品にようにも思えたのは・・・おそらく私の嫉妬でしょうな(笑)。