太宰治「トカトントン」
日本の敗戦を知ったその日、絶望に「死のう」と決意したとき以来のことです。どこかからトカトントンという音が聞こえてきたとたんに、私は感情を失ってしまうのです。トカトントン、仕事中にもトカトントン、デート中にもトカトントン。とたんにこんなこと無意味なんじゃないかと、面倒になってしまうのです。いったい、どうして何でしょう。教えて下さい。この音は、なんでしょう。
佐渡;トカトントン―[録音資料] [新潮カセットブック] (新潮カセットブック D- 1-1)
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/01
- メディア: 文庫
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「やってもムダだよ、だから、やらなくても同じだよ」あるいは「実際にやれば出来るけど忙しくてね、勉強は続けているから自信はあるけど」。そういった(熱心な活動が無駄に終わった経験から?)活動自体に意味を失ってしまった人間の、苦悩についての公開質問状です。最後に書かれるのは太宰治なりの解答ですが、私なら「とっくに到達していた」ことを意識させる方向に話を持っていく、と思います。