久生十蘭「母子像」

 和泉太郎、中学一年B組。父は死亡、母は将校慰安所を切りまわしていたが、戦災により認定死亡。「釈放しようと思うのですが、実は、かんばしくない報告が相当・・・先生、あの子は何か過去に辛いことがあったのではないでしょうか」「あれは、母親の手で首を絞められて、殺されかけたことがあるんです・・・いま、どこにおりましょうか。よく聞いてみたいので」「ご案内します」

湖畔・ハムレット 久生十蘭作品集 (講談社文芸文庫)

湖畔・ハムレット 久生十蘭作品集 (講談社文芸文庫)

 大人たちに心を閉ざし、母への愛情を頼りに生きる少年による、突如の謎の行動の意味とは。思いつめた少年の硬直した意識は、先生や警察の行き届く範囲外にありました。世界短編小説コンクール第一席受賞作品。