戦地で右足を切断した英助は、もう死んでしまっても仕方がないと観念していた。いまから思えば、生きかえることを深く信じていたが、心の片隅の感傷は、生命と云う炎のまわりを、死んでも仕方がないぞと云いつづけていた。しかし英助は死ななかった。死んで…
五十のとしまで独身できてしまった川上竹六は、棲家である物置小屋を出て、町端れにある魔窟「抹香町」を目ざした。そこにはひやかしの路すがら、二三度食指が動いた売女がいる。だが、その女「みえ」としては、としをとった不景気な男を、馴染客としたところ…
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