原芳泉は、不幸な生涯を送った人物であった。彼は天才・大貫桂岳と比する才能を持ちながら生かす道を知らず、偽作家となり果て、孤独のうちに生涯を閉じた人であった。今、私は桂岳の伝記の記述を、しばしば投げ出してしまうのだ。それは桂岳の輝かしい経歴…
私よりも優れた人間が、私よりも先に死んでいく。懸命に生きようとする人間を押しつぶす、ある理不尽な力を感じざるをえない。60を過ぎた私は、縁側でこれまでのことを思い出していた。けれども、抵抗のしようがないじゃないか。どうしようもないではないか…
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