2006-02-20から1日間の記事一覧

中野重治「空想家とシナリオ」

車善六は空想家だった。たとえば彼は自分の名前の由来についても空想に浸っているのだった。また彼は役所での仕事の合間にも、創造的苦痛を伴うような自分にあった仕事、たとえばシナリオを書くことなどを考えていたのである。彼の空想はどんどん広がってい…

丸谷才一「墨いろの月」

翻訳家の朝倉がバーでマスターから聞いた話によると、どうやら30年ほど前に自分が喧嘩を教えた子供が現在ヤクザの親分になっており、「あのとき教わっていなかったら、今の自分はない」と言ったらしい。喧嘩に負け続ける子供に指南したことは自分の中では美談…