中野重治「空想家とシナリオ」
車善六は空想家だった。たとえば彼は自分の名前の由来についても空想に浸っているのだった。また彼は役所での仕事の合間にも、創造的苦痛を伴うような自分にあった仕事、たとえばシナリオを書くことなどを考えていたのである。彼の空想はどんどん広がっていく。啄木、バルザック、龍之介、グーテンベルグ、ファーブル・・・けれども、いざ原稿に向かうとその羽は閉じ、今日もやっぱり役所へと向かう。
- 作者: 中野重治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/01/01
- メディア: 文庫
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