2007-04-24から1日間の記事一覧

久生十蘭「鈴木主水」

殿様が御代替の折、押原右内があらぬ権勢をふるうようになった。奥には欠込女が入り込み、連日騒ぎをしているときく。譜代の家来は、火中の栗を拾おうとせず、御暇乞いの声を出すようになった。ある日、家来の鈴木主水は「お家には悪人が不足しているが、そ…

久生十蘭「湖畔」

貴様も諒解することと思うが、自由に対する執着から、俺は情人とともに失踪して新生活をはじめることにした。俺は華族の論客として名声を高めてきたが、実際は避け難い猜疑心と卑屈な根性を持つ、低劣臆病な人間なのだ。この夏、俺は貴様の母を手にかけたが…