久生十蘭「湖畔」
貴様も諒解することと思うが、自由に対する執着から、俺は情人とともに失踪して新生活をはじめることにした。俺は華族の論客として名声を高めてきたが、実際は避け難い猜疑心と卑屈な根性を持つ、低劣臆病な人間なのだ。この夏、俺は貴様の母を手にかけたが、子に対する父の礼儀として、その間の拠所ない事情を仔細に書きつけておく。
- 作者: 久生十蘭
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/08/11
- メディア: 文庫
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