武田泰淳「審判」

 敗戦によって知った日本の姿、それは世界中から憎まれる日本である・・・。けれども月日はその恐ろしさを癒してゆく。人間なんてそんなものか。けれども、友人となった青年・二郎は違った。彼は戦時中に戦地で行った大罪を、自らの中で処理できずに苦悩し続けていた。

 罪悪感の処理についての問題です。「何々だったからしょうがない」という理由を後付けすることで、自らの責任によって行った悪しき行為を、心からきれいに取り除いてしまっていいのだろうか・・・と悩む青年の話です。これは、高校の歴史教科書問題や靖国神社問題と関連して未だに語られており、科学は発展すれどもそれに追いていかれ、進歩しきれない「人間」を見ます。