牧野信一「山を降る一隊」
山奥の製材所で木材の長さを計り、それを大きな声で読み上げる。私の仕事はメートル係りである。陽の下で行う健康的な仕事は晴れやかな毎日を与えてくれた。仕事を覚えて日々上手になっていく自分を知ることは、楽しかった。妻もそんな私を晴れがましく思っていた。彼らの飲み会に招かれると私は上座に座らされた。二次会に行こうとしたある晩、王と后のように馬に乗せられた私と妻を中心に、仲間たちはトキの声を上げながら行進した。どこまでもどこまでも――。
- 作者: 牧野信一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/05
- メディア: 単行本
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