牧野信一「雪景色」
引越しを控えた小説家の瀧は、庭にいる鯉の処分のことを考えていた。ところが金魚屋が高額に引き取ってくれることを知ると、雇人・AとBに指図して一匹残らず生け捕りしようと鯉捕りの采配を振るうのだった。AとBが必死に働く池を眺めるうち、瀧の思いは日常から離れ、だんだんと夢中になってしまうのであった。
- 作者: 牧野信一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/05
- メディア: 単行本
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瀧は、いつの間にか急を要する境遇のことなどは忘れてしまった。徒然のあまりに地引網を引かせて高見の見物をしている、そんな遊興に耽っている人のような、獲物なんぞは如何でも好い――わけもなく豊かな呑気な気分にもなってしまった。