牧野信一「西部劇通信」

 この写真を御覧。一見すると、まさにアメリカ・インディアンの屯所と見られるだろうが、よくよく見ると僕をはじめ君の知っている顔があるだろう。ここの人たちは僕が着ているインディアン・ガウンを見て、「おお、都の流行スタイルはこれか!」ととりちがえ、アコガレをいだいたらしく、とうとう若者の大半はこの服装になってしまった・・・というわけさ。

バラルダ物語 (福武文庫)

バラルダ物語 (福武文庫)

 内面の充実を図ろうとする人は外面に無頓着ですが、その無頓着な外面が格好良く思われてしまいました。しかも、こだわっているはずの内面は全く無視された上で・・・。これは当人にとって不幸なことに違いありません。ヒーローと呼ばれても、悲しいだけ。心当たりのないことを褒められて有頂天になる人や、「もらえるものは何でももらっておいた方がいい」という人には、この主人公の気持ちは分からない。