牧野信一「夜見の巻 「吾ガ昆虫採集記」の一節」
人はゼーロンと私との関係を仲が良いと勘違いしているが、とんでもない、ヤツは私の宿敵である。見るだけで腹が立つ。だが、この若者の前ではしっかりとしたところを見せておこう。軽やかに発足の合図をかけたのだが、ゼーロンが再び歩き出すのは私の「動」の声に御せられるのではなくて、飽食した時であり、また私は、その瞬間を見はからって合図をするのでもあった。
- 作者: 牧野信一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/11/16
- メディア: 文庫
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