井上靖「黄色い鞄」

 パパの金を持ってきたことがバレたのかしら。マリが連行された東京駅の二階の部屋には、黄色い鞄をもった男女4人が腰掛けていた。彫りの深い顔に皮肉な薄笑いをした湊東平、興奮気味のサラリーマン・西島五助、「出て行って!」と言ったら出て行きっぱなしで帰ってこない夫を探しにきた主婦・西本しげ、そして、奇妙に理屈をこねる夢田菊次。――クリスマスイブの夜、ここで出会った男女の運命が交錯する。

短篇 (井上靖全集)

短篇 (井上靖全集)

 軽快なテンポで描かれる、とってもおしゃれなサスペンスの小品です。現実的な話でありながらもどこか現実的でなく、後半の「舞踏会」のシーンは夢がどこまでも・・・ぐるぐると魅了されます。映画化するならば、マリ役はオードリー・ヘップバーンで決まりといった感じです。