2004-04-08から1日間の記事一覧

井上靖「黄色い鞄」

パパの金を持ってきたことがバレたのかしら。マリが連行された東京駅の二階の部屋には、黄色い鞄をもった男女4人が腰掛けていた。彫りの深い顔に皮肉な薄笑いをした湊東平、興奮気味のサラリーマン・西島五助、「出て行って!」と言ったら出て行きっぱなし…

石川淳「葦手」

銀二郎と仙吉は女好みが似通っていて、妻や愛人をかかえながら妙子と梅子の元へ通う。わたしはわたしで美代との関係が誤解され、「鉄砲政」に命を狙われる――。わたしは高邁なるものを求めているのだが、この年月の所行は酒と女、ひとりで泣いたり笑ったりと…

大岡昇平「春の夜の出来事」

女道楽は仕放題、女房子供は放ったらかし、それが俳優の常識だった時代である。美男俳優の夫は失踪し、息子・太郎はすでに一人立ちしていた。そしてある夜のこと――母・露子の家に泥棒が入った。露子は、様子を見に行った太郎の叫びを聞く。「人が死んでる」…