石川淳「葦手」
銀二郎と仙吉は女好みが似通っていて、妻や愛人をかかえながら妙子と梅子の元へ通う。わたしはわたしで美代との関係が誤解され、「鉄砲政」に命を狙われる――。わたしは高邁なるものを求めているのだが、この年月の所行は酒と女、ひとりで泣いたり笑ったりときている。その狂態を紙に記すなら、葦のすがたに模して文字を書き崩したという、昔の葦手書のたぐいであろう。
- 作者: 石川淳,立石伯
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/04/28
- メディア: 文庫
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切り捨てて、はめ込んで、散り捨てて、そうした作業を眺めるうちに、ごちゃごちゃっとした人間関係が編まれています。読者はわけが分からなくなるところですが、その寸前でUターン。最後の数ページにおいて絡まった全ての糸が、無駄なくするするっ!と解けてしまいます。
それはとても気分がいいもので、読後感は最高に格好いい。私が最初に読んだ石川淳作品であり、未だに私的石川淳ベストの1つ。
- 作者: 石川淳
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/11
- メディア: 単行本
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