竹ノ内静雄「ロッダム号の船長」

 ロッダム号の船長としてサン・ピエールの港に寄航した私は、オーギュスト・モーラスと挨拶を交わしていました。私の妻から彼の妻への指輪のプレゼントを渡し、会話を楽しんでいたときのことです。身体を一種の鋭い身ぶるいが走り抜けたと思うと、次の瞬間、オーギュストと私は激しく吹き飛ばされて酒樽に叩きつけられていました。島の中央にあるペレー火山が大噴火をしたのです。

 構成力も描写力もあり、読めば読むほど深まる謎もありで、これは掘り出し物。
 火山に襲われた船長が、瞬時の判断が要求される危機的状況の中で、さまざまな出来事に遭遇するパニック小説です。思い出してしまった悪夢、忘れてしまったあの頃のこと、そして救うことが出来たもの、出来なかったものになかったもの、そして、その後に見えた世界・・・それらについて、迫力の描写とともに記されます。
戦後占領期短篇小説コレクション 4 1949年 (4)

戦後占領期短篇小説コレクション 4 1949年 (4)