石川淳「霊薬十二神丹」

 助次郎はたわいない口論から蹴たおされ、一刀により肝腎なものをすぽりと切りおとされた。神医につかえてきた弟は、つちかった秘術を兄のために使った。天地の霊をこめた丸薬を用いることで、かのものは元の位置にもどったのである。だが、様子のことなるところがあった。平素の様子のあわれさと、事が生じたときの巨大さである。ちなみにその薬の名は、十二神丹。

石川淳 (ちくま日本文学全集 11)

石川淳 (ちくま日本文学全集 11)

 霊薬「十二神丹」によって非常の力を与えられた助次郎は、本人の思いとは裏腹にさまざまな大活躍をみせます。直江山城、上杉景勝といった実在の名将をまぶして、リアルと非リアルを交錯させたユニークな話です。ただ、薬の効能に左右されっぱなしの助次郎の生き様は、笑ってばかりではいられず、ペーソスを感じさせるものがあるのです(でもやっぱり笑えます。しかも下ネタだし・・・)。