石川淳「曾呂利咄」
奉行石田光成来訪の知らせに、はてと立ち上がった曾呂利新左衛門、これは知部殿と盃あげるが、いや、今宵人知れず参ったのはそなたの智慧を拝借するためだ、まず聴け、と語ったところによれば酒樽が不思議な盗まれ方をするといい、そなたの器量にぜひ頼む、むろんただではない、一樽はおろか酒蔵一棟寄進につこうと治部少輔、するとにっこり笑って曾呂利立つ。
- 作者: 石川淳
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1991/07
- メディア: 文庫
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息継ぎをする場所がなく、苦しそうにもうかがえますが、むろん、適当に切って悪いという法はありません。小説の後半で示される対決の図は、さすがは曾呂利、やはり曾呂利、と見事な裁きを見せてくれます。そして、結末に待っているのは見事なまでの、ほい、ファンタスティック。
ちなみに曾呂利新左衛門は実在しており、豊臣秀吉の御伽衆といわれる人物です。