大江健三郎「スパルタ教育」

 若いカメラマンが発表した《狂信者たち》という組写真は、各方面から厳重な抗議を受けた。その反応の大きさのため、世間知らずだったカメラマンの内部には、功名心にとってかわって恥ずかしさの虫が巣をつくった。かれは自信を失い酒に逃げるが、《狂信者たち》の問題は妻の身の安全にまで及び・・・。プライドを賭けたレッスンがはじまる。

空の怪物アグイー (新潮文庫)

空の怪物アグイー (新潮文庫)

 脅迫という行為は「恥」の感情につけ込むもの。その行為の受容は自ら敗北を認める「負け犬」につながる道の途中にあり、「恐怖」の感情がそれをリードしています。
 結合する要素を見究めてしまえれば、酵素を用いることでそれらをバラバラにすることが出来、うまく切り離してやることで「受容」からの転換・脱却を図ることが出来るはずです。限界に達したところでブチッと切るだけじゃありません。その意味で、とても分析的な小説でした。そして、このタイトルは上手い。