大江健三郎「空の怪物アグイー」
著名な若い作曲家Dのもとには、ときどき空の高みから「あれ」が降りてくるのだ。カンガルーほどの大きさの赤んぼう、エゴイスティックな意思から、かつて殺してしまった赤んぼう・・・。「きみはまだ若いから、失った大事なものをいつまでも忘れられずに、それの欠落感とともに生きているということはないだろう?」
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1972/04/03
- メディア: 文庫
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大事なものを失った経験がある人は、この話に強い共感を得ることだろうと思います。映画「八日目」のような読後感。「個人的な体験」以後の中期を代表する傑作。
「きみはまだ若いからこの現実世界を見喪って、それをいつまでも忘れることができず、それの欠落の感情とともに生きているという、そういうものをなくしたことはないだろう?まだ、きみにとって空の、百メートルほどの高みは、単なる空にすぎないだろう?」