花田清輝「沙漠について」

 書けない原稿を前にして一語も浮かばず苦悩する、孤立無援の私である。砂を相手に模索し、錯乱し、試行錯誤を繰り返している。砂、砂、砂。閉じてしまいそうな瞼と戦いながら、砂について沙漠について、考察したあげくの思考の流砂。そうだ、砂には無限の破壊力とともに無限の創造力があるのだ。

花田清輝評論集 (岩波文庫)

花田清輝評論集 (岩波文庫)

 読むことで頭の体操になる思想家、花田清輝のエッセイ風作品。楕円思想から繋がっていく、量子力学の「状態」、砂時計の哲学、スフィンクスの姿、ユークリッド幾何学、そして「ピラミッドはなぜ三角なのか?」。
 よりによって砂をテーマにしちゃったものだから、その思考はもがいてももがいても、その砂地獄から抜け出すことは出来ません。すると、当然、行き着く先は・・・。広げに広げた風呂敷の畳み込み方、その手管は見事です。

 要するに、砂が悪いのだ。我々の不毛の原因は、すべて砂にある。