大江健三郎「ブラジル風のポルトガル語」
ぼくと森林監視員とは、五十人近い村人が集団失踪した部落を訪れた。彼らの失踪に思い当たる理由はない。発狂でもなければ、税金に苦しめられたのでもない。――変わり映えのしない現状からの脱出に理由はあるのか、いや、理由なんているのだろうか?
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1972/04/03
- メディア: 文庫
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なお、末端までの意思統一は出来ていないのに、それでも躊躇なく全員が同じ行動をとるという点はストライキのようで面白かったですが、団体交渉というのはそんなものなのでしょう。
「もし、確たる理由があるのなら、おれはそれを知りたいよ。この村に大災厄がおこってわれわれがみな滅びてしまうという予言でもあったのだったら、おれたちも逃げなければなあ!」