小沼丹「カンチク先生」

 ジス・イズ・ゼエムス、これはゼエムスなり。これはゼエムスにて候、でも宜しい。小学校の頃英語の個人教授を受けたカンチク先生は、難しい日本語で訳すのが好みだったのだろう、必ず最初は僕に判り兼ねる訳を附けた。またあるときは、どうしてか判らぬが、カンガルウの話になった。

戦後短篇小説再発見15 笑いの源泉 (講談社文芸文庫)

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 先生自身はいたってマジメなのですが、なんだかちょっとユーモラス。「何だか変ですね、大丈夫?」と思えますが、結構むちゃくちゃな武勇伝をもっていたのでした。後半はその話。先生実は、英語の生徒よりも、素直な話し相手が欲しかったのかな、と思ったり。