三浦朱門「傷だらけのパイプ」

 落第して当然の学生を前に、福山は評価を下せないでいた。落第することで彼の人生はどうなるのだろう。だが、彼を卒業させたとしても、社会の害毒を生み出すことになるのではないか。また学生は土下座をしながら「許してください」と言ったのだが、許す、とはそもそもどういうことなのだろうか・・・。


 「出来の悪い学生に落第点をつける」というルールにのっとれば当然の行為が、どのような波紋をその学生と周囲に与えるのだろうか、ということについて、パイプをくゆらせながら真剣に考え込んでしまう生真面目な先生の話です。最終的には、最初の失敗が後々に与える影響を「傷だらけのパイプ」という言葉で表現し、「許す」という言葉の意味を発見するに至ります。家庭の話、女性の話もからめて描かれる、極めて思索的な作品です。