牧野信一「吊籠と月光と」
僕は自己を三個の個性A〜Cに分け、それらを架空世界で自由に活動させて息抜きを持つ術を覚えていた。この糸口は、息苦しさで破裂しそうになりながらじっとしていた僕に、インヂアン・ダンスを躍らせたのである。空想させてやるだけで、僕の頭は、ベリイ、ブライト!これが本来の僕の姿だ。これからあれへ、あれからこれへ!
吊籠と月光と―牧野信一集 (1949年) (創元選書〈第149〉)
- 作者: 牧野信一
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 1949
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「詩人も続け、哲学者も物理学生も俺に続け――。国境の丘まで見送ろう。」
と僕は叫んだ。そして僕はこんなことを思った。「お前たちを修業の旅に送ってしまった後の、孤独の俺こそ、本来の俺の姿だ。今夜限り俺はお前たちとも縁がないのだ。」
- 牧野信一「西瓜喰う人」