安岡章太郎「走れトマホーク」

 私たちは巨大ビスケット会社の招待で、アメリカ西部を団体旅行していた。大歓迎を受け、楽しいときをすごし、そして次の町へ行く。はじめは気楽な旅行だった。だが、その間、会社は特に何の宣伝を要求することもなく、誰から何を言われることもなかった。そうすると、私たちは何なんだ。私たちは、いったい、こんなところで何をやっているのだろう?という気持ちになってくる。

走れトマホーク (講談社文芸文庫)

走れトマホーク (講談社文芸文庫)

 表立っては何の宣伝も要求してこないスポンサー。制約もなく自由に振舞えて素敵な旅行に思えますが、その影も形も見えないだけに、逆に不気味です。全てが裏でコントロールされているような気がして・・・。そうして感じてしまう孤独と不安に立ち向かうことが出来るのが、「トマホーク」なのでした。走れ!