牧野信一「天狗洞食客記」
「エヘン!」と咳払いを発すると、右手の先で顎を撫で、それから左腕を隣りの人を抱えるように横に伸して、薄ぼんやりとギョロリ。奇妙な癖をもち、それが頻発するようになった私は、周りの人々にことごとく気味悪がられた。そこで私はR氏の世話で、天狗洞の食客となったのである。親切なR氏は、私を規則正しい生活の中で変身させようとしたのだろう。しかしそこの主人というのが、これまた変わり者で・・・。
- 作者: 牧野信一
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1990/10
- メディア: 文庫
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ハイテンションの中にも憂いがあり、「別にいいや。どうせ何の目的もないのだから」といった捨て鉢さが、ちょっぴり濃い目に流れています。この作品を評して「千古の傑作」とは梅崎春生。
- 梅崎春生「贋の季節」