2005-02-01から1日間の記事一覧

牧野信一「天狗洞食客記」

「エヘン!」と咳払いを発すると、右手の先で顎を撫で、それから左腕を隣りの人を抱えるように横に伸して、薄ぼんやりとギョロリ。奇妙な癖をもち、それが頻発するようになった私は、周りの人々にことごとく気味悪がられた。そこで私はR氏の世話で、天狗洞…

萩原朔太郎「猫町」

私は、道に迷う。意図的に、道に迷う。不安から抜け出したところに、快楽があるために他ならない。その日も私は、道に迷っていた。ところがそのとき現れたものは、全く見ず知らずの町であった。一体こんな町が、東京の何所にあったのだろう?どうしてこんな…