武田麟太郎「日本三文オペラ」

 このアバートは隣室の声が響き、お互いの生活は半ば丸出し、床や壁には人間の色んな液汁が染みこんで汚く悪臭を発散しており、狭くて汚い部屋ばかりである。それでも家賃の安さからたいていの部屋が塞がっていた。最低レベルのアパートの住人たちによる、三文オペラ

日本三文オペラ―武田麟太郎作品選 (講談社文芸文庫)

日本三文オペラ―武田麟太郎作品選 (講談社文芸文庫)

 男女問題3題と、社会問題1題。いろんな生活の断面図です。この作品は、冒頭数行の流れるようなカメラワークが魅力的です。空に浮かぶ気球から、目線は下に降りていき、ビルの屋上、さらには人間生活へ・・・。そしてその生活は、つとめて客観的かつ写実的に描写されています。