内田百輭「サラサーテの盤」

 亡夫の遺品を、まるで取り立てるかのように返してもらいにくる未亡人・おふさ。そして彼女と一緒にやってくる、六つになる遺児。いくら言っても家の中に入ってこず、外の闇に一人で立ったまま・・・そして今夜はサラサーテのレコードを取りに来た。

サラサーテの盤―内田百けん集成〈4〉 (ちくま文庫)

サラサーテの盤―内田百けん集成〈4〉 (ちくま文庫)

 神経質な空気が緊張感を生み、何かが起こりそうな予感をかもし出しています。明日に進んでいきたい人間の心を過去に留めておこうとする、地面から伸びて足を強くつかむ手・・・。