深沢七郎「みちのくの人形たち」
みちのくに住むヒトに誘われて、私は東北に行ったのである。そのヒトは家など一軒もないような山に住んでいた。どういうわけかこのあたりの人たちは、三十五、六歳のあのヒトを「ダンナさま」と呼んでいる。食事が終った頃、青年がやってきて「産気づいたから屏風を借りに来ました」と言った。これはこのあたりの風習だそうで、あのヒトが「ダンナさま」と呼ばれることと関係しているらしい。
- 作者: 深沢七郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1981/07/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る