開高健「ロマネ・コンティ・一九三五年」
冬の日の午後遅く、小説家と重役が、広いテーブルをはさんですわっていた。二人の間には酒瓶がおいてある。本場中の本場、本物中の本物、ロマネ・コンティ。「・・・では」とつぶやいた小説家は、暗い果実をくちびるにはこぶ。流れは口に入り、舌のうえを離れ、集り、そして――小説家はある感慨とともに、灰青色の瞳をした女を思いだしていく。
- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1981/07/25
- メディア: 文庫
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