埴谷雄高「虚空」
"Anywhere out of the world!" 地の果てに到着した私が発したその声は、虚空への呼びかけである。虚空への内なる切なげな喘ぎである。虚空には透明な風がはためいている。けれども地を這う習性を持つ私の喘ぎは、そこで自身へとひきもどされる――。数日前に、この乳鉢を伏せたように完璧な円形をした山を知った。妙帽山。そこで私は虚空で鳴るような響きを聞いた。
- 作者: 埴谷雄高
- 出版社/メーカー: 現代思潮新社
- 発売日: 1960/11/25
- メディア: 単行本
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煩雑な社会から飛び上がったところにある無の場所、虚空へのアコガレ。その思いがさまざまな形をなして、想う場所へと羽ばたいていきます。見上げたところにあるのは、天空、蒼穹・・・透明感の高い言葉により読者を空にいざなった後で、一転、叩きつけられるリアリティの重み。その展開力。