埴谷雄高「意識」

 不整な脈拍が止まった後、再び動き出した鼓動を聞いても、私は安堵の気持ちはかけらほどしか持てず、生の単調さを悟ってしまった感がある。鼓動が停止したときに、私は絶望と愉悦を感じるのだろう。だが、いまは駄目なのだ。私は、蹴飛ばした小石が転がる方向に行こうと決めている。

虚空

虚空

 まっすぐに立って道を歩くことの出来ない主人公は、倒れこんだままで自分だけの世界を得ようとします。そのあげくに太陽を直視したり、自分を痛める行為を「遊戯」として行います。ふざけているようでもありますが、本人、いたってマジメです。普段は知りえない特別な世界を知るための行為の裏には、非力で孤独な冒険家の、必死な姿が浮かびます。