横光利一「面」
吉を、どのような人間にしたてるかということについて、家族間で晩餐後、論議されていた。大阪へやるほうがいい、百姓をさせればいい、お茶わん作りをさせるといい・・・。その夜、吉ははてのない野の中で、口が耳までさけた大きな顔にわらわれた。以来、吉は学校でもぼんやりとしていたが、まもなく何事かをひらめいて、屋根うらへのぼっていって作業をしはじめた。
- 作者: 千葉幹夫,講談社文芸文庫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/07/09
- メディア: 文庫
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歩く道を自分で選べない、あるいは他人に選ばせるように仕向けた人間は、結果の不出来を他人のせいにしようとすることがあり、そのことについても描かれます。この作品は、母親の控えめながらいつでも吉を思っている態度が、とてもいいです。