大江健三郎「頭のいい「雨の木」」
暗闇の壁をもち驟雨を降らせる「雨の木」から戻ってくると、少年青年を愛するビートニクの詩人と車椅子の天才建築家の論争が、僕を待ち受けていた。それは彼らの足元あるいは背後にいる聴衆を意識したゲームあるいはパフォーマンスであったが、下降堕落の方向と上昇啓発の方向とのあいだの差異についての論争であり、世界を知る「位置」についての建築運動さらにはそれに引き続く勢いを生むものだった。
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/02/27
- メディア: 文庫
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相手に勝ろうとする原理原則からは、相手より勝ろうとする意識しか生みません。伸びきった競争原理や結果重視のテクニック至上主義は、本当の意味での中身をともなったものではありません。言い訳可能な状態で中途半端に成功しつづることよりも、完膚なきまでに叩きのめされた方がいい。すると相手云々ではなく、自分を知ることの大事さに気づくはずであり、さらにもう一歩進めたら、「ベストを尽くしたから満足」などとは思わずに、「ベスト程度を尽くせてしまったことに不満足」を抱くはずです。満足なんてするわけがない。