石上玄一郎「気まぐれな神」

 敗戦により日本人は追いやられ、私はお菊さん家に下宿することになった。そこに彼女の友人のミセス・アトキンソンがたずねてきた。この人物、外見は日本人だが、態度や表情は西洋婦人に近い。お菊さんによると、彼女は戦争中は日本人を名乗っていたという。両生類か!

 自己中心的かつワガママな「ミセス・アトキンソン」に振り回されっぱなしの小心者「石上さん」について書かれた、読みやすくて軽快なエッセイ風作品です。忍耐を強いる生活を喜劇として描き、運命に従う戦後の日本人の生き方を示します。
 ユーモラスな語り口とは一見かけ離れたタイトルの意味は・・・というところが、見所のひとつ。それは今後についての所信表明となっています。