2009-06-24から1日間の記事一覧

石上玄一郎「気まぐれな神」

敗戦により日本人は追いやられ、私はお菊さん家に下宿することになった。そこに彼女の友人のミセス・アトキンソンがたずねてきた。この人物、外見は日本人だが、態度や表情は西洋婦人に近い。お菊さんによると、彼女は戦争中は日本人を名乗っていたという。…

野間宏「顔の中の赤い月」

戦争で生きる支えを失った男・北山年夫と、女・堀川倉子の出会い。彼らの関係の発展をジャマするのは、北山が戦場でつかんだ『自分のことは自分で解決するしかない』という戦場での哲学だった・・・。過去を清算しきれない段階での新たな出会いは、とうとう…

石川淳「喜寿童女」

江戸下谷敷数奇屋町にいた名妓・花は、幼い頃から精気さかんで、生涯に男を知ること千人を越えた。それが天保四年癸巳三月一日、花女七十七歳の喜寿の賀宴のさなか、とつじょ行方知れずになった。そして花女は胡兆新伝来の甘菊の秘法により、老女変じて童女…