2005-01-26から1日間の記事一覧

源氏鶏太「たばこ娘」

朝起きるのと同時に、私の煙草生活がはじまる。寝床で三本、顔を洗って二本。私は本を売り、洋服を売り、それをみんな煙にしてしまった。私は煙草のために死んだら本望である。今日も会社に向かう途中で煙草を買う。いつもツユから買うことにしているが、そ…

松本清張「湖畔の人」

定年まで後六年――。同僚と決して打ちとけることがなく、親しい友人も出来なかった矢上は、遠く離れた諏訪の地への転勤を命じられた。彼はすでに諦めており、孤独を自分の居場所と定めていた。だが、松平忠輝が流された町・諏訪に対しては、ある心の動きがあ…