2005-12-25から1日間の記事一覧

色川武大「右むけ右」

私が昭和十五年に入学した中学校は、内面のことよりも外面を正すことに特徴があったように思う。それは中島校長の教育方針にあったのだろう。今、当時のことを振りかえるにあたり、私はこの小文を恩師の美談にするつもりはない。劣等性だった私は教師たちか…

色川武大「サバ折り文ちゃん」

顔と胴体が異常に大きく、足が細い。身の丈は二メートル弱。出羽ヶ獄文治郎は、全体の感じが陰気で痴呆的な巨漢力士だった。大正から昭和にかけて文ちゃんの愛称で親しまれ、負けても勝っても日本中の人気者だった。だが、その人気はマイナスのものであり、…