色川武大「右むけ右」
私が昭和十五年に入学した中学校は、内面のことよりも外面を正すことに特徴があったように思う。それは中島校長の教育方針にあったのだろう。今、当時のことを振りかえるにあたり、私はこの小文を恩師の美談にするつもりはない。劣等性だった私は教師たちからビンタを食いつつ、彼らの言辞やあげ足とりめいたことをしていたが、現在また同じようなことをやろうとしている自分に呆れる。
- 作者: 色川武大
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1989/10/07
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (45件) を見る